セッションの中で過ごした30年
Steinbergの記念企画は、異例なほど長い記憶力を備えて登場した。MusicTechによると、同社はHALion 7.5の登場と往年のVSTインストゥルメントの復活を通じて、Virtual Studio Technologyの30周年とHALionの25周年を祝っている。紙吹雪はデジタルでも、積み重ねてきた年月は本物だ。
現役のミュージシャンにとって、この節目はあらゆるプロジェクトフォルダーに潜む現実的な問題を浮き彫りにする。プラグインは、インストーラーや認証システム、OS、ホスト形式が先に変わってしまった後も、耳の中では長く生き残ることがある。午後の数時間で作った曲が、5年後にはアーカイブ上の難題になっているかもしれない。VSTの30年という節目は、プロジェクトの再現性をコンピューターが永遠に処理してくれるものとして扱うのをやめる、よいきっかけになる。
VSTはいかにしてスタジオの家具になったのか
Steinbergは1996年にVSTを導入し、ソフトウェアエフェクトを個別のユーティリティーのように扱うのではなく、レコーディングホストの中で動かせるようにした。その後バーチャルインストゥルメントも登場し、プラグインスロットはフェーダーと同じくらい当たり前の存在になった。シンセ、コンプレッサー、モジュレーションチェーンの状態を曲と一緒に保存し、設定で埋まったラックを撮影しておかなくても、後から同じ状態に戻せるようになった。
その利便性は、レコーディングのペースを変えた。アイデアがまだ熱を帯びているうちに、サウンドを選び、オートメーションを施し、複製し、修正できるようになったのだ。一方で、目に見えない依存関係も生まれた。プロジェクトファイルはプラグインの状態を記憶できても、実行コード、サンプルライブラリー、プリセットファイル、認証に依存していることに変わりはない。各コンポーネントはそれぞれ異なる速度で古びていく。ブラウザー上ではセッションが無傷に見えても、利用できなくなったインサートのひとつが、その曲のフックを担っているかもしれない。
なぜ往年のインストゥルメントが復活するのか
往年のVSTインストゥルメントの復活が響くのは、ソフトウェアのサウンドがそれぞれの来歴を身に付けるからだ。あるパッチが、初めてのEPや特定のコラボレーター、あるいは誰かがついにサイドチェインコンプレッションを理解した週と結び付くこともある。見慣れたインターフェースは、筋肉の記憶も保ってくれる。マニュアルが何年も前に消えていても、手はどこに伸ばせばよいかを覚えている。
復活したインストゥルメントによってアクセスを取り戻せる場合もあれば、現在のコンピューターにおなじみの音色を持ち込める場合もあるが、互換性に左右される。それでも、セッションを完全に同一の状態で再現できるとは限らない。OSもプロセッサーも変わり、工場出荷時のライブラリーは改訂され、移行後にプリセットの挙動が変わることもある。
正常に読み込めることは、最初の確認にすぎない。再び開いたパートを、以前のリファレンスバウンスと比較する。エンベロープ、モジュレーションの深さ、テンポ同期、チューニング、エフェクトの余韻を聴き比べる。曲の冒頭と末尾のオートメーションも確認する。以前のミックスと再び開いたトラックが一致しない場合、見慣れたプリセット名よりも、音声リファレンスのほうが確かな証拠になる。
リコール用パッケージを作る
有用なアーカイブがあれば、将来のスタジオ環境でも、元のコンピューターを再構築せずに重要な判断を聴き取れる。プロジェクトファイルは今なお価値があるが、それを補う資料も必要になる。
- クリーンなプロジェクトのコピーを保存する。 分散した録音をセッションフォルダーにまとめ、デスクトップ上のファイル、一時ダウンロード、外付けドライブへの意図しないリンクを削除する。
- 曲を決定づける判断をプリントする。 フル解像度のステレオミックス、適切なステム、重要なバーチャルインストゥルメントのオーディオを書き出す。サウンドの一部を成すエフェクトも含める。
- 編集可能な素材を残す。 後の修正に役立つ可能性があるMIDIとドライ録音を保持する。プリント版の代替として頼るのではなく、それらと一緒に保管する。
- 依存関係のメモを書く。 プラグイン名とバージョン、プリセット、外部ライブラリー、サンプルレート、テンポ、ルーティング、特殊なオートメーションを記録する。プリセットの書き出しが利用できない複雑なパッチでは、スクリーンショットも役立つ。
- パッケージを別の場所に保存する。 作業用コンピューターから離れた場所にも少なくとも1部を保管し、コピーしたオーディオと書類が実際に開けることを確認する。
可能であれば、WAVやAIFFなど一般的なロスレスオーディオ形式を使う。ステムは容量を消費するが、引退したシンセサイザーの存在すら知らないソフトウェアでも開ける可能性がある。長く維持できるアーカイブは、問題が起きても致命的にならない。インストゥルメントが消えても、プリントした演奏はアレンジメント内に残る。
アップデートをスタジオのメンテナンスとして扱う
HALion 7.5は、Steinbergの記念年における現在を担う存在だ。主要なインストゥルメントのアップデートは、機能一覧だけでは特定のスタジオ用コンピューター上での挙動を予測できないということを思い出させてもくれる。
アップデートする前に、ベンダーが公開しているOSおよびホストとの互換性を確認する。復元可能なバックアップを作成し、納期に直結するセッションは複製して、現在インストールされているバージョンを記録しておく。可能であれば以前のインストーラーも保管し、代表的なプロジェクトの検証が完了するまで、動作しているシステムには手を加えずに残しておく。
インストール後は、小規模なテストプロジェクトを作成し、古いセッションをいくつか開く。プリセットの呼び出し、オートメーション、外部ライブラリ、テンポ同期エフェクト、オフライン書き出しを確認する。インパルスレスポンスが見つからない、出力先の割り当てが変わっている、ライブラリを再度指定する必要があるのに気づきにくい、といった小さな不一致にも注意したい。このメンテナンス作業は、意図的に退屈なものだ。誰かがミックスを待っている状況で、失われたサウンドを作り直すよりは短時間で済む。
プラグインは終了時の計画で選ぶ
インストゥルメントやエフェクトを評価する際、サウンド、レスポンス、ワークフローが中心であることに変わりはない。長期的な再現性も、その評価項目に加えるべきだ。互換性が文書化され、プリセットを書き出せ、ライブラリの場所が把握でき、重要な部分を複雑なルーティングなしでレンダリングできるツールは、より安心して使える。
サンプルベースのインストゥルメントには、特に注意が必要だ。プラグイン本体とコンテンツが別の場所に保存されている場合があるためだ。両方を記録しておく。ライブラリが外付けドライブにあるなら、フォルダー構成を記録し、プロジェクトで使用が許可されているカスタムサンプルも含める。
レガシー製品の再発行版も、そのサウンドが現在の制作に必要なら、十分に役立つ。いったんそのサウンドがトラックの核になったら、音声として書き出しておく。決定的な音声ファイルが一つあれば、プラグインが過去の思い出になった後も、その音楽的な選択を残せる。
退屈なうちに監査を行う
現在のコンピューターを導入する前に作成した完成済みプロジェクトを一つ選び、45分かけて確認する。開いて警告を記録し、リファレンスミックスと比較し、脆弱なソフトウェアに依存しているサウンドを特定する。すべてが問題なく再現できるなら、今のうちにアーカイブ一式を作成する。欠けている部分があるなら、古いドライブやマシン、アカウントの記録にまだアクセスできるうちに一覧化しておく。
次に、作業中の曲にも同じフォルダー構成を適用する。VSTの30周年に記念の装飾は必要ない。作り直すのが惜しいシンセ・ラインから始め、プロジェクトファイル、依存関係のメモ、プリントしたステム、そしてフル解像度のミックスを残しておく。
執筆 マーヴィン・キャバノー
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