分母は変動する
プロデューサーがボーカル録音をもう一度予約しようとしているとき、安定した再生回数は、確かなものが少し得られたように感じられるかもしれない。だが、ロイヤリティの計算にはもう一つ変動する要素がある。同じプールにおける、ほかのすべての対象再生回数だ。
Music Business Worldwideの10月2日の先行記事は、Michael Smithのストリーミング不正利用事件を比例配分の計算から捉えている。記事によると、量刑言い渡しは10月6日火曜日に予定されている。現役ミュージシャンにとって重要なのは、ほかの場所での活動が、自分の作品に紐づく配分をどう変えるのかという点だ。
再生回数が変わらなくても、分母が大きくなれば取り分は小さくなりうる。増加分の一部は、リスナーが別の音楽を見つけたことによるものだ。一方、受け入れられた人為的な再生は、実際のリスナー需要を反映しないまま、共有プールの一部を占めることがある。そのため、同じ作品について、再生状況を示すダッシュボードとロイヤリティ明細書とで、異なる姿が見えることもある。
帳簿上のプール
架空の会計単位を使い、意図的に単純化した計算式で考えてみよう。この例はSmithの口座や、特定のサービスについて説明するものではない。
配分額 = 分配対象プール × 自分の対象再生回数 ÷ そのプールの対象再生回数の合計。
ある仮想のサービスが、対象再生回数100万回に対して、分配する単位を100,000持っているとする。あなたのカタログの再生回数は10,000回。この取り分は1%で、1,000単位となる。
ここに、サービスが適格と認める人為的な再生を25万回加えます。プールは10万ユニットのままです。分母は125万回の再生となり、カタログの取り分は0.8%に下がって、800ユニットになります。人為的な再生には2万ユニットが割り当てられます。
実際の再生数はまったく同じなのに、カタログへの配分は20%減っています。
プールが固定されているという前提は重要です。実際の活動状況は収益にも影響し、実際の会計処理では個別のプールや適格性のルール、契約条件が関わります。この計算は希薄化の影響だけを切り分けたものです。権利者への配分を示しており、個々のミュージシャンの収入が決まるまでには、さらに分配や控除があります。
小さな数字には単位が必要
MBWの見出しにある「1日2回再生」という表現は、数字の単位を確かめる大切さを示しています。1曲あたりの再生数と、アカウントあたりの再生数では、答える問いが異なります。1曲あたりの平均値から全体の活動状況を把握するには、カタログの規模と対象期間の両方が必要です。
大規模なカタログでは、1作品あたりの再生が控えめでも、合計するとかなりのリスニング数になることがあります。これは正規のカタログにも当てはまります。キューや別バージョンのミックスを多数収録したライブラリーには、再生が伸び悩む作品がたくさん含まれていることもあります。再生の少ないトラックは、音楽の世界ではごく普通の存在です。
ジャンルを判断の近道にするのは適切ではありません。音数の少ないアンビエント音楽や機能的なループ、知名度の低いアップロード作品も、ポップスのリリースと同じように慎重に扱い、公正に評価すべきです。リリース数の多さや反応の少なさが疑問を招くことはあっても、それだけでリスナーが捏造されたと証明できるわけではありません。
報道では、トラック単位の再生数、カタログ全体の合計、アカウントの活動状況を区別し、それぞれに対象期間を明記する必要があります。月間のカタログ合計を、1日あたりのトラック別平均とそのまま比べることはできません。
適格性ルールが境界を変える
最低再生数のルールは、考えられる政策対応の一つだ。仮にこうしたルールを設けるなら、再生数が定められた基準に満たない録音作品を支払いの対象外にできる。
こうした基準を設ければ、再生数の少ない多数の録音作品に活動を分散させることで得られる報酬を減らせる。その効果は、制度の仕組みやルールの運用方法によって異なる。また、実際にリリースされたばかりの作品や、ゆっくり聴かれているアーティストのバックカタログまで対象外にしてしまう可能性もある。
この仕組みは、支払い対象となる総再生数から不正な再生をどれだけ除外できるかと、本物のリスニングがどれだけ未払いになるかという、別々の二つの尺度で評価しよう。原資が固定されている場合、ロイヤリティの対象となるカタログが小さくなれば、基準を満たす音楽への配分は増える一方、基準に届かないアーティストは不利益を被る可能性がある。
適格性と真正性は、別々の問いに答えるものだ。再生がすべて本物でも、人気の基準に届かない録音作品はありうる。基準を満たした作品についても、再生の健全性を確認する必要がある。
基準の導入を歓迎する前に、対象外となった再生をサービスがどう扱うのか、また本来それらに配分されるはずだった資金をどうするのかを確認しよう。アーティストには、分類についてわかりやすい説明と、誤りを申し立てる手段も必要だ。
一人のリスナーの支払いをたどる
ユーザー中心モデルでは、配分の単位が変わる。サブスクリプションを例に単純化すると、各リスナーの支払いから分配可能な金額は、その人が再生した対象作品の間で配分される。ひと月を一つの小規模なカタログの作品だけで過ごしたリスナーなら、その人の支払い分はそのカタログに振り向けられる。
そのリスナーの履歴に含まれない不正な再生が、サービス全体の再生数を分母とすることで、この特定の配分を直接希薄化することはありません。配分の対象範囲が変わっているためです。
これはあくまで、特定の条件を前提とした制度設計上の議論です。アカウントの健全性、有効な支払い、不正な再生の扱いは依然として重要です。リスナー自身の履歴に含まれる不正な再生は、そのリスナーへの配分に影響する可能性があります。また、計算を加入者単位に近づけることで、ファミリープランや広告収入によって賄われるリスニングについても検討が必要になります。
このモデルで、すべてのインディペンデント・ミュージシャンの収益が増えるとは限りません。結果は、どの加入者が聴くか、その加入者にどれだけの金額を帰属させられるか、そしてそのリスニングがどう配分されるかによって異なります。両方のモデルで同じカタログを比較し、収益と適格性に関する前提を明示したうえで配分結果を示すと、有用な比較になります。
次の明細を照合する
プラットフォームの再生数は、対応するディストリビューターの明細と一緒に保管し、確認できる場合は対象期間と地域も記録しておきましょう。リスニングの日付と、支払いや調整が明細に反映された日付は分けて記録します。後日反映された調整も、月ごとの比較で特定できる状態にしておきましょう。
ロイヤリティを再生数で割ると、その明細の診断に役立つ平均値が得られます。ただし、収益の構成や適格性は異なるため、普遍的な再生単価を示すものではありません。1か月分の明細から逆算したレートをもとに、レコーディング予算を組むのは避けましょう。
支払い額が減ったという事実だけでは、ストリーミングの不正を特定できません。報告された再生数が変わらないのにロイヤリティが減った場合は、プールの収益、適格性、報告の遅れ、調整のいずれに関係する変化なのかを確認しましょう。配分の詳細がすべて確認できない場合は、まず対象期間と記録済みの調整について問い合わせてください。
プロモーションの請求書やリリースの記録も、各種レポートと一緒に保管しておきましょう。不一致が見つかった場合は、該当する録音の識別情報、サービス名、対象期間をディストリビューターに伝えます。2つの明細を添付し、変更があった項目に印を付けてください。
執筆 エイヴリー・ノックス
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